ユーロ/円相場は、2月25日の118.73円をボトムに、足元では121円台後半まで切り返す展開になっている。2月25日にはイタリア総選挙で同国政局の先行き不透明感が強くなったことが嫌気され、ユーロに対する売り圧力が強まった。しかし、その後は欧州情勢に対する関心は高まらず、ユーロ高というよりも円安主導でユーロ買い・円売り圧力が再び強くなっている。
もっとも、イタリア10年際利回りが約3ヶ月ぶりの高水準に近づくなど、欧州リスクに対する懸念も根強い。3月4日にはユーロ圏財務相会合が始まり、欧州首脳は債務危機収束のために緊縮財政を続行することをユーロ圏諸国に呼び掛けている。しかし、イタリアでは民主党首脳部から選挙法を改正して年内に再選挙が必要となる可能性が指摘されるなど、当面は不安定な政局環境が続く可能性が高い。そして短期的により警戒すべきは、7日の欧州中央銀行(ECB)理事会である。特に政策金利の変更は想定されていないが、昨年第4四半期の国内総生産(GDP)が下方修正され、1~2月のユーロ圏各種経済指標が低調な経済環境を示す中、ドラギ総裁が厳しい経済見通しを示すと、利下げ観測が改めてユーロを押し下げるリスクが高まる。
一方、円サイドでは政府が次期日銀総裁候補として国会提示した黒田アジア開発銀行(ADB)総裁の所信表明が行われている。マーケットでは特に材料視されていないが、物価2%達成に向けてあらゆる手段を講じることが改めて協調されている。民主党も同人事案に賛同する以降を示しており、4月以降の強力な緩和策に対する期待感が、ユーロ/円相場の下落余地を限定しよう。ECB理事会後にユーロ安・円高が進む局面があれば、改めてユーロ買い・円売りで対応する流れになる。
今後1週間の予想レンジは、119.00~123.75円。